これぞ“矯正ギプス”の効果だ。2回2死二塁で、低めのチェンジアップを西川は完ぺきにとらえた。前進守備を敷いていた外野のはるか頭上、右中間を深々と破る適時三塁打。落合監督がキャンプ序盤に考案した特殊ヘルメットを着けて打ち続けた成果を、最初の実戦で早くも披露した。
「以前のスイングならあの打球は打てなかった。うまくバットに乗せられました」
西川には打つ瞬間に頭が左側に倒れる悪いクセがあった。特殊ヘルメットは、右打者用のヘルメットに厚紙を継ぎ足し、頭が傾くと肩に当たるようにしたもの。クセが直っていない装着当初は、「ヘルメットが当たってカクンとなることがたびたびあった」と言う。
短期間でクセを直すため、西川が考えたのはスイング軌道の根本的な改良。「ボールを上からたたいてスピンをかけようとしていたけど、下からしゃくり上げるくらいの意識に変えた。結果的にレベルスイングの形になりました」。ヘルメットを一つのきっかけに、打法そのものを見直したのだ。
約2週間の“矯正期間”中、フリー打撃はもちろん、マシンやティー打撃でも特殊ヘルメットをかぶり続けた。「スイングを変えたら首も傾かなくなった。ヘルメット? 『カクン』もないし、もう取っても大丈夫だと思いますよ」と“矯正完了”を自信を持って宣言した西川。目標の開幕1軍へ、一つ階段を上った。
(木村尚公)
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