2008年7月16日 紙面から
4500回目のウイニングボールをつかみ取ったのが荒木なら、いきなりの決勝点をたたきだしたのも荒木だ。木佐貫の2球目を強振。打球はラミレスの頭上を越して、左翼芝生席ではねた。
「前が工藤さんでしょ。その前が河原さん。全部、巨人戦なんですよね」。自身3本目の先頭打者アーチ。荒木の記憶通り、すべてが巨人戦で、すべての試合に勝っている。多くはない。が、チームを勢いづけるのが1番・荒木の一発だ。1番打者だけが味わえる快音と快感が、山本昌に勇気を与え、チームに闘志をもたらした。
土の球場の忌まわしき記憶ともこの日をもって決別した。7月は甲子園と広島で6試合。うち、5試合で名手が失策を犯した。その4度目が9日の同点失策。寝られぬまま迎えた朝、荒木の携帯電話が震えた。シカゴにいる福留からだった。誰も触れようとしなかった痛恨のプレーを、1人だけ笑ってくれた。中日ではたった1人だった同級生。傷はなめない。慰めもしない。その日に4安打。福留だけにできる“アドバイス”に、荒木は救われた。
「これで吹っ切りたい。打ったのに考えすぎなところがあったので、今度こそ…。きょうの3本で乗っていきたいです」
巨人・高橋由との先頭打者弾の応酬は、セ・リーグでは実に30年ぶり(5度目)のことだった。2人の合作で記録に名を残すわけだが、勝った荒木の方が記憶には刻まれるはずだ。そして、2位・巨人をたたいた1勝に、何かを感じ取っていたのが落合監督だ。
「ウチが出直すときはなんかわからないが北海道なんだよな。そして、巨人が相手なんだ」
3年前とダブったのかもしれない。いざ、北の国から再出発-。
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