<阪神5-7中日>◇14日◇甲子園
中日タイロン・ウッズ内野手(38)が阪神の誇る「JFK」を粉砕した。3-4の7回、久保田から一時逆転となる34号2ランを運ぶと、同点とされた9回には今季4打数無安打と天敵だった藤川から11球の死闘の末に中前に決勝2点タイムリーを放った。3安打4打点の主砲が、虎の勝利の方程式を打ち崩して逆転勝ち。首位阪神から3位巨人まで、3強が0・5ゲーム差に接近。球史に残る「9月大混セ」となった。
ウッズは、うなりを上げる藤川の152キロ直球を、太い腕でたたきつぶした。火が出るような打球は一直線にセンター前へ。決勝の2点タイムリー。静まり返った甲子園の一塁上でウッズは両手をグッと握ってほえた。
「2ストライクになって真っすぐしかないと思った。ああいう場面で11球もまっすぐで勝負してくれた投手は初めてだよ」。
同点の9回2死二、三塁。マウンドにはストッパー藤川がいた。初球からすべて“火の玉ストレート”を投げ込んできた。カウント2-3からは、4球連続で150キロ以上の剛球をファウルし、粘った。小細工なし。男同士の意地とプライドの勝負だった。いつも投手に勝負を避けられてきたウッズは思わず打席で幸せそうに笑った。そして11球目。ついに藤川の球をとらえた。
最悪の展開から試合の流れを変えたのもウッズだった。1点を先制しながら4回に先発朝倉の乱調で1-4と逆転された。「JFK」が出てくる前に追いつきたい。5回に2点を返したが、3-4と1点届かないまま7回へ。まるで勝ったような大声援を背に久保田がマウンドに上がった。
1死後、荒木が右前打を放って暴投で二進。中村紀は三振に倒れて2死となったが、ウッズが打席に入った。カウント1-1。151キロの速球をたたく。打球はぐんぐん伸びてバックスクリーンへ飛び込んだ。34号逆転2ラン。相手の必勝パターンを1人で打ち砕いた。
試合後、落合監督は逆転に次ぐ逆転の激闘を振り返って「そんなに簡単にはいかないよ」と苦笑い。そして最後の場面について「お互いの駆け引きだ。藤川もあそこで変化球を投げて打たれたら悔いが残るだろう」としみじみと話した。
首位決戦の第1ラウンドで相手が誇る久保田、藤川を主砲が打ち砕いて首位に0・5ゲーム差。2連敗すれば阪神に優勝マジック「13」が点灯する状況だったが、逆にこれ以上ない勢いをつけた。
(日刊スポーツ)