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19 . September
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11 . September
■我慢して福留を使った首脳陣

 これか、恐るべしヤギの呪(のろ)いは。ここ10試合(現地9月9日まで、以下すべて現地日付)で2勝8敗、そのうちサヨナラ負けは2度。カブスのチーム状況は“今季最悪”の事態に陥っている。ついにあるメディアは、シーズン終盤で8ゲーム差をひっくりかえされた、屈辱の1969年を持ち出し、カブスファンを一層不安にさせている。

 ここは、背番号「1」が救世主となって……。しかし、長い間、不振から光を見出せないでいる福留孝介は、ここ数試合先発から外された。チームの大ブレーキでなりふり構っていられなくなったカブスは、福留を我慢して使う限界を通り越し、ベンチに置かざるを得ない状況になったのだ(ちなみに10日のカージナルス戦は「6番・ライト」で先発出場)。

 首脳陣はむしろ、ここまで「よく我慢して使った」と言っていいかもしれない。福留の打率は6月から現在まで、まさにバブル崩壊後の日本経済のように急降下した。6月→2割6分4厘、7月→2割3分6厘、8月→1割9分3厘、9月→1割(9日現在)。その間、ルー・ピネラ監督が直接指導に乗り出したり“早出特打”をしたり休みを与えたり……いろいろと福留復活に気をもんだが、福留の状態は上がってこない。一度狂った歯車は、なかなかうまく回転しない。

■スカウト「打ち取りやすい打者」
 米スポーツ専門局『ESPN』電子版は3日、今季のフリーエージェント選手を評価する記事を出した。もちろん、福留も挙がっていたのだが、内容は少し衝撃的だった。数人のスカウトは、福留に対して「打ち取りやすい打者」という言葉を使っているという。そして「対戦相手はゲーム序盤に投手が内角の胸元に1、2度突けば、後は外のボールで打ち取れる」と分析しているようだ。極め付けは、「福留はイチローのようなアプローチをしているが、イチローのようなスピードとバットコントロールに欠けている」と指摘していた。

 福留がイチローと同じアプローチだとはまったく思わないが、この「内角を突く」というのは、福留攻略のキーワードだろう。自分が記憶している範囲で申し訳ないが、この内角攻めが顕著に見え始めたのは、オリオールズとの交流戦(6月)からだと思う。

 交流戦は期間が限定されるため、同じリーグや同地区のチームよりもかなり「データを重視した作戦」を取ると言われている。4、5月に「福留が外角の球をうまくさばく」というスカウティングリポートが出ていたのだろうか。そのとき、オリオールズバッテリーは福留に対して、執拗(しつよう)に内角を突いた。その3連戦で登板した先発の一人、ジェレミー・ガスリーに、福留の攻め方に対しての話を聞くと、こう答えていたことを思い出す。「内角をうまく攻められれば、外角の対処も落ちるだろうから、それが狙いだ」。ただ、彼は福留に本塁打を浴びた。内角を突くはずの球が、ど真ん中に入ったからである。福留は6月中旬までは、失投を逃さなかったのだが……。

■“してやられた”シーン振り返る

 そしてもう一つ、福留攻略の鍵は「オフスピード(スピードを殺した)ボール」である。特に福留が左投手の外角のスライダーや右投手の内角のスライダーに空振りし、体重が前のめりになったり打席でくるっと1回転したりする姿が、今季終盤よく見られる。現地記者にも一度聞かれたことがある。「どうしてああいう空振りが増えたんだ?」と――。

 これは、偶然ではないと思うのだが、福留が内角攻めと、この外角スライダーで完ぺきに“してやられた”というシーンがあった。6月24日、オリオールズ戦の9回1死満塁で守護神の左腕ジョージ・シェリールと対戦したときだ。そのときの攻めを振り返る。

初球:内角高めの胸元すれすれの球→ボール。福留はのけぞり、その勢いでバッターボックスから飛び出した。

2球目:外角ストレート→福留は見逃し、ストライク。

3球目:外角スライダー(ストライクからボールになる球)→福留は空振り。

4球目:3球目とほとんど同じコースの外角スライダー→福留は空振り。体重が前のめりになり、くるっと1回転した。

 これが他球団にとって“最高のサンプル”になったのかは分からないが、「内角を突いて外の変化球で打ち取る」という攻めは7、8月と多くなった。

■福留自身も把握しているのだが…
 データを見ても、それは分かる。福留のコース別の打率は、内角高めが1番低く、1割8分2厘。次に外角低めの2割5厘。そして、内角低めの2割6分9厘となっている。球種ではスライダーの打率が1番低く、2割1分9厘、カーブは2割6分1厘、ストレートは3割1分8厘となっている(9月9日現在)。こういった数字を、もちろん各球団は理解している。というより、もっともっと詳しいデータで徹底的に弱点を明かしている。メジャーの各球団は、打者の弱点を詳細に分析し、そこを執拗(しつよう)に攻めてくる。福留は丸裸にされ、もがき苦しんでいる。

 もちろん、こういった傾向を、福留自身も理解はしている。彼は開幕当初と夏場の投手の攻め方について、「外だけじゃなく、内も使うだろうし、速い球もあれば、遅い球も変化球もあるだろうし。そういうのが多く混ざるようにはなっている」。そして「それが当たり前」と話した。ただ、分かってはいても、他球団が分析した弱点(福留は違うことを思っているかもしれないが)を、克服できないでいる。

 福留の口癖は、「1年を通してやってみないと分からない」。打撃のアプローチが正しいのか、正しくないのか。それはシーズンの途中では「判断できない」。ただ、もう9月も半ばを迎える。シーズンの終わりがすぐそこまで迫っている。開幕戦で踊った“偶然だぞ”のプラカード。それが今は少し皮肉に感じる。福留が再びヘルメットを高々と抱げるシーンが今季見られるのだろうか。シカゴの街は、すっかり秋の気配が漂い始めている。
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