本塁打にも負けないインパクトがあった。小笠原から中前打を放った岩崎が、次打者の柳田の初球に動いた。投球が捕手のミットに収まる絶妙の瞬間にスタートを切ると、悠々セーフのタイミングで二塁へ滑り込んだ。「過去にほとんどやったことがない」というディレードスチール。捕手の小田の悪送球まで誘って岩崎は三塁へ達した。
結局、球審が柳田に送球妨害があったとジャッジして一塁へ戻され、“幻”に終わったが、それがなかったとしても完ぺきな盗塁だった。
岩崎は「サインが出たので行きました。大きめのリードを取って、いいスタートが切れた」と満足そうに振り返った。
50メートルを5秒8で走る俊足で、昨季は2軍で13盗塁をマークした。「けがで試合に出られなかった時期もあったし、もっと積極的にいけば数は増えたと思う」と足には自信を持っている。
今季は、その足を生かすチャンスが増える。福留の離脱と和田の加入で、試合の終盤、代走に起用される機会が多くなりそうだからだ。ショートのポジションでは井端の壁は厚いが、岩崎にとっては好機到来。「試合に出るとしたら代走が主になる。警戒されても盗塁を決められるように、今から『スタートの1歩目』を意識しています」と、まずは代走のスペシャリストになろうと意欲満々だ。
シート打撃を偵察した阪神の嶋田スコアラーは「勝負どころで代走に出てくる選手の1人になるでしょう」と警戒感を募らせた。他球団も評価する足を武器に、岩崎が開幕1軍へ“滑り込む”。
(木村尚公)
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