台中の夜空に、日本の星野監督は両手両足を大きく広げ、笑顔で3回舞った。選手たちはハイタッチで喜びを表現した。北京五輪の切符を懸けた大事な一戦で、しかも完全アウェー。重圧がかかる中、それを跳ね返したのは日本らしい「細かい野球」と「つなぐ野球」だった。
六回に逆転を許した直後の七回無死満塁の好機。同点に追いつける確率が高い戦法は何か。星野監督が選択したのはスクイズ。打席のサブローは、きっちり転がして同点として見せた。勢いの付いた打線は、西岡が勝ち越し適時打、川崎が左前打……。集中力は途切れず、大量リードを奪った。
星野監督は言う。「スクイズでまず同点という形がとれた。つなぎの打撃。選手たちの次へ、次への意識がああいう形になった。日本の野球を学んできたとおり、右へ、左へと打ってくれた」。 チームを編成するに当たり、星野監督は田淵ヘッド兼打撃コーチらと話し合い、機動力を生かした細かい野球ができるメンバーをそろえた。他国から「パワー不足」を指摘されても、「どんなに打球を飛ばしても1点」と気にすることはなかった。「日本の野球」で戦うこと決め、貫き通したことが五輪への道へとつながった。
「アジア予選で五輪出場が決まるのは1チームだけだった。正直、ホッとしている」。星野監督は開放感に浸った。
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